兵法書六韜についての解説

中国の兵法書を解説します。

中国には古代から多くの兵法書が伝わっていますが、その中でも有名なものは「武経七書」と呼ばれる7つの兵法書です。その中には「孫子」「呉子」「尉繚子」などが含まれていますが、今回はそのうちの一つである「六韜」に注目してみたいと思います。

 

 

六韜とは

「六韜」とは、周王朝建国の功致者である太公望呂尚が周の文王・武王に兵法を指南する形で書かれたとされる兵法書です。「韜」とは剣や弓などを入れる袋の意味であり、「文韜」「武韜」「龍韜」「虎韜」「豹韜」「犬韜」の6つの部分から構成されています。それぞれ国家戦略や軍隊組織、戦術や陣形などに関する内容が記されており、戦わずして勝利を収めるための知恵が詰まっています。
この記事では、六韜から選んだ名言を現代語訳し、その意味や教訓を解説します。六韜は戦争に関する知恵が詰まっていますが、それはビジネスや人生にも応用できるものです。ぜひ参考にしてみてください。

 

盈虚篇「家族を失った者や不幸があった家に救いの手を差し伸べる。自らは質素倹約に務め、税金や賦役をなるべく少なくする」

 

 盈虚篇とは、易経の六十四卦の一つで、豊卦とも呼ばれます。盈虚とは、月が満ちたり欠けたりすることを意味し、栄えることと衰えることの変化を表しています。この卦は、天地の盈虚に倣って人間も時に応じて行動すべきだと教えています。
具体的には、家族を失った者や不幸があった家に救いの手を差し伸べることが大切だと言っています。これは、自分が栄えている時に他人に寛容で慈悲深くあることで、天道に従うことになります。また、自らは質素倹約に務め、税金や賦役をなるべく少なくすることも重要だと述べています。これは、自分が衰えている時に無理をせず、身の丈に合った生活をすることで、天命に従うことになります。
盈虚篇は、人生の浮き沈みに動じないように心構えを示してくれる卦です。自分だけではなく他人や社会も含めて考えられるようになれば、幸福や平和が訪れるでしょう
 

 

 

文師篇「天下は一人の天下に非ず、天下の天下なり」

 

 六韜文師篇とは、中国の古典兵法書『六韜』の第一巻「文韜」の第一篇「文師」のことです。『六韜』は周の太公望が周の文王・武王に兵学を指南したという設定で書かれた書物で、文韜・武韜・龍韜・虎韜・豹韜・犬韜の6巻60篇からなります 。
「文師」とは、「戦争をするために国を治める方法」という意味です。

 

 この名言は、「天下」という言葉が二回出てくることからも分かるように、「天下」の定義について述べたものです。ここでいう「天下」とは、「国」や「社会」や「世界」など広い範囲を指す言葉ですが、「一人」という言葉と対比されています。
 
 つまり、「天下」とは、「一人」すなわち君主や支配者やリーダーなど個人的な立場や利益によって決まるものではなく、「天下」すなわち万民や社員や顧客など多数派や公共的な立場や利益によって決まるものだということです。
 
 この名言から学べる教訓は、「自分だけではなく他者も考える」ということです。自分だけが得をするように行動すれば、他者から反発されたり見捨てられたりします。逆に他者と利益を共有したり協力したりすれば、信頼されたり支持されたりします。
これは戦争だけでなくビジネスや人生でも同じことが言えます。自分だけ儲けようとする企業は顧客から離れられますし、自分だけ楽しもうとする人間は友人から避けられます。自分だけでは何も成し遂げられません。「天下」を目指すなら、「天下」を大切にしなければなりません。

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